「投資信託とETFの比較シミュレーション」を公開!

「投資リターンの9割はアセットアロケーションで決まる」の真実

「投資リターンの9割はアセットアロケーションで決まる」を正しく理解しよう! 

ぷくろー

「投資のリターンの9割はアセットアロケーションによって決まる」っていう言葉は聞いたことあるけれど、きちんと解釈できているかというとちょっと怪しい。。今回はそんな人向けの記事だよ!

「投資リターンの9割はアセットアロケーションで決まる」という言葉は、投資におけるアセットアロケーションの重要性を示す言葉として、よく引用されています。

でも、このシンプルな言葉を正しく理解できている人は、実は少ないかもしれません。

よく使われる言葉ですが、僕自身きちんと理解できているかというと、怪しい部分がありました。

そこで、本記事では、この言葉の引用元として知られるイェール大学イボットソン教授の論文を参照することで、「投資の9割はアセットアロケーションで決まる」の本質に迫っていきます!

「投資リターンの9割はアセットアロケーションで決まる」の解釈は意外と曖昧?

まずは、「投資リターンの9割はアセットアロケーションで決まる」の正しい解釈について、確認していきましょう。

ツイッターアンケートでも解釈が割れる結果に

本記事の公開の先立ち、「投資リターンの9割はアセットアロケーションで決まる」の解釈について、以下のようなアンケートを取ってみました。

162名の方に投票いただき、良い感じにバラツキましたね。

正解からいうと、3つ目の「一定期間後のリターンの9割は説明できる」が正解です。さすがぷくろーのフォロワーさん達ということで、正解の割合がもっとも多かったです。

ただ、一方で、半数以上の方が間違った解釈をしているという事実も浮かび上がってきました。これはこの記事を読んでもらわねば!

イェール大学イボットソン教授の論文

「投資リターンの9割はアセットアロケーションで決まる」という研究結果は、いくつかの論文で示されています。その中でも、有名なのがイェール大学のイボットソン教授によるものです。

イェール大学イボットソン教授の論文

論文のタイトル「Does Asset Allocation Policy Explain 40, 90, or 100 Percent of Performance?」は、簡単に日本語訳をすると「アセットアロケーションポリシーは、パフォーマンスの40%か90%か100%を説明するの?」という感じです。ちょっと不思議なタイトルですね。

タイトルにも繋がってくるのですが、この論文では、実は、先程のツイッターアンケートの選択肢にあった誤回答(1つ目と2つ目)の割合についても検証を行っており、それぞれ40%と100%を説明するという結果になっています。

整理をすると、以下の通りです。

  1. ファンド間のリターン差分の4割(40%)は説明できる
  2. 平均で10割(100%)のリターン水準を達成できる
  3. 一定期間後のリターンの9割は説明できる

イボットソン教授は「投資リターンの9割はアセットアロケーションで決まる」という表現が、上記のような様々な解釈をされていることに気付き、それぞれの解釈の正確な分析を行ってくれたわけです。

3つの研究それぞれ気になるところですが、以下では、今回のテーマである「一定期間後のリターンの9割は説明できる」について、論文の内容をなぞりながら詳しく解説していきます!

イボットソン教授の論文を読み解く

アセットアロケーションの影響度を調べる検証方法

イボットソン教授は、94の投資信託(mutual funds)と54の年金ファンド(pension funds)のデータを元に、投資リターンにおけるアセットアロケーションの寄与度について統計的に検証しました。

具体的には、各ファンド毎のアセットアロケーションにおけるベンチマークのリターンと各ファンドのリターンで回帰分析を行い、決定係数「R2」を求めました

ぷくろー

え、ちょっと待って。決定係数「R2」ってなに・・?

ってなりますよね(汗)

決定係数「R2」は、統計の世界で使われるもので、回帰分析をした際に、目的変数に対して説明変数がどれくらい決定に寄与するかを表した値です。0〜1で表されます。

今回のケースでいうと、ベンチマークのリターン(説明変数)によって各ファンドのリターン(目的変数)がどれだけ決定されるのかを示しています。

つまり、決定係数「R2」の値が1であれば、「アセットアロケーションによって各ファンドのリターンは100%説明できる」=「投資リターンの”全て”はアセットアロケーションで決まる」ということになります。

逆に、決定係数「R2」の値が0であれば、「アセットアロケーションは各ファンドのリターンに全く関連がない」ということになります。

10年間毎月のデータで回帰分析を行うと

以下のグラフは、分析対象のある投資信託とベンチマークのリターンの10年間の毎月のリターン分布を示したものです。

投資信託とベンチマークの10年間毎月のリターンデータで回帰分析

右上に「R2=0.90」と記載があるように、この投資信託については、アセットアロケーションのベンチマークとなる指数によってリターンのうち9割が説明できる結果になっています。

ただ、1つのファンドをみるだけでは、検証としては不十分です。94の投資信託、54の年金基金に対して、この分析をそれぞれ行っていく必要があります。

全てのファンドを分析した結果は?

各投資信託及び年金基金に対して、先程の回帰分析を行い、決定係数「R2」を算出した結果が以下の表です。

各投資信託と年金基金の決定係数R2の平均値及び中央値

「R2」の下部に記載されている「Mean」は「平均値」、「Median」は「中央値」を表しています。

「Brinson 1986」と「Brinson 1991」はブリンソン氏による先行研究の結果、「Mutual Funds」は「投資信託」、「Pension Funds」は「年金基金」をそれぞれ表しています。

これをみると、投資信託の「R2」の中央値は87.6%、年金基金の「R2」の中央値は90.7%ということで、「双方のファンド共におおよそ9割ほどがアセットアロケーションによりリターンが決定されている」という結果になっています。

ただ、投資信託の平均値は81.4%と若干乖離しているのが気になるところです。そこで、もう少しデータを見てみましょう。

投資信託において決定係数の平均値が低い理由

投資信託の決定係数「R2」の平均値が低い理由をさぐるため、各ファンドの「R2」の分布を見てみることにしましょう。

以下の表は、「パーセンタイル(Percentile)」毎に投資信託と年金基金の決定係数「R2」の値をあらわしたものです。

「パーセンタイル」とは?
パーセンタイルは、データを小さい順に並べたとき、初めから数えて全体の何%に値するかを示したものです。5パーセンタイルであれば、最小値からかぞえて全体の5%に位置する値を示します。

投資信託の決定係数R2のパーセンタイル分析

さて、この表の「パーセンタイル5」の部分に注目しましょう。これは、決定係数「R2」が最小値から5%のファンドにおける「R2」の平均値を示しています。

これを見ると、投資信託(Mutual Funds)の「46.9%」という数字が飛び抜けて低いことがわかります。これは、投資信託では大きくベンチマークからリターンが外れているファンドがあったということです。

このことから、投資信託における決定係数「R2」の平均値が低い理由として、一部の外れ値(英語でいうと「Outliers」)が大きく影響しているということが読み取れます。

年金基金よりも、投資信託のほうが、よりアクティブな運用により、ベンチマークから良くも悪くも逸脱するようなリターンが生まれているということですね。

本当にアセットアロケーションによる効果なのか?

ここまでの検証結果によって、投資信託や年金基金などのファンドにおいては、アセットアロケーションポリシーのベンチマークによって、その投資リターンのおおよそ9割ほどが説明可能であることが確認できました。

次に、イボットソン教授はこう考えました。

イボットソン教授

これって、本当にアセットアロケーションによる効果なのかな? 同タイミングで資本市場に参加していればそんなに変わらんのでは?

このアイデアを検証するべく、先程の各ファンドのアセットアロケーションポリシーベンチマークによる回帰分析に加えて、「S&P500指数」及び「各ファンドの平均的なアセットアロケーション」についても回帰分析を行いました。

「S&P500」及び「平均ベンチマーク」のR2との比較

その結果が以下の表です。

アセットアロケーションの効果を測るべくS&P500との比較

この表を見ると、実は一般的な株価指数である「S&P500」であっても、各ファンドの平均値で75.2%、中央値で81.9%の投資リターンを説明できることが分かります。

また、今回の研究対象のファンドの平均的なアセットアロケーション(Average Policy)では、平均値78.8%、中央値で85.2%という数字が出ています。

これらの数字から分かることは、たしかにアセットアロケーションポリシーによって投資運用のリターンの9割ほどを説明することはできますが、実はアセットアロケーションが同一でないS&P500のような株価指数や平均的なアセットアロケーションファンドであっても、投資リターンの8割前後は説明できてしまうということです。

これに関して、イボットソン教授は次のように記述しています。

Hence, the high R2 in the time-series regressions result primarily from the funds’ participation in the capital markets in general, not from the specific asset allocation policies of each fund. In other words, the results of the Brinson et al. studies and our results presented in Table 2 are a case of arising tide lifting all boats.

簡単に日本語訳してみます。

つまり、時系列回帰における高いR2は、それぞれのファンドの個別のアセットアロケーションポリシーではなく、主に一般的な資本市場への参加によってもたらされている。言い換えると、ブリンソンらによる研究と我々の結果は、「上げ潮はすべての船を持ち上げる」の一例といえるでしょう。

「Arising tide lifting all boats(上げ潮はすべての船を持ち上げる)」はよく言う諺で、投資においていえば、市場全体(上げ潮)が好調であればどのアセットアロケーションでも伸びるでしょうといった意味合いになります。

つまり、アセットアロケーションポリシーと投資リターンには相関関係は見られるけれども、そこには資本市場の動向という双方に影響を及ぼす「第三の変数」が存在していたわけです。

僕はこれを読んでいて、正直ちょっと肩透かしを食らったような気持ちになりました(笑)

「アセットアロケーション、そんなに関係ないんかいっ!」と。

まとめ

というわけで、本記事では、「投資リターンの9割はアセットアロケーションで決まる」を正しく理解するために、イボットソン教授の論文を元に、その研究結果を詳しく見てきました

みなさんは、どう思われましたか? 僕は「あれ?そうだったんか!」と驚きというか唖然としてしまいました。

よく引用される主張も、きちんと見てみると、意外と落とし穴があったりするものですね。

今回の研究に用いたデータは1998年までの10年間のデータです。これが、インターネットバブルやリーマンショックを含んだ期間であれば、もしかしたらアセットアロケーションが主要因となる可能性も十分にあると考えています。

もしそんな研究内容をご存知の方がいらっしゃいましたら、是非教えてください!

本記事でご紹介した元論文を読みたいという方は、こちらからどうぞ。

また、冒頭のツイッターアンケートのその他の選択肢についても、論文内では紹介されているので、また別記事にて解説していければと思います。

お楽しみに!