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ヤフーとLINE、カニバる両社が経営統合の道をえらんだ最大の理由

ヤフーとLINEの経営統合が正式に発表されましたね。

先週、日経新聞からこの情報がリークされた際、世の中は「まさかこの2社が!」とびっくり仰天になっていましたが、僕は遅かれ早かれこの動きは来るんじゃないかなと考えていました

では、なぜ両社の経営統合は起きたのか、その最大の理由について、個人的な解釈ですが、解説していきましょう!

「シナジー」という名の「重複」

ヤフーとLINE、実はカニばっている領域が多いんですよね。

本日行われた記者会見でも「シナジー」として両社のサービスが紹介されていましたが、「これは”シナジー”ではなく、シンプルに”重複”じゃないかな?」と思ってしまいました。

実は重複領域が多いヤフーとLINEのサービス

たとえば、「ヤフーショッピングとLINEショッピングってシナジーあるんだっけ?」とかそういうお話です。

図的にはなんだかシナジーすごそうな感じに思えますが、実際一つ一つ考えていくと「どうなんだっけ?」というところはあります。

ぷくろー

これだけのサービスがどのように統合されていくのか、、なかなか大変そうだね

また、生活者の視点でいうと、基本的に競争してくれていたほうが、よりよいサービスが生まれることが期待できるでしょう。そんな観点から、この経営統合を喜んでいいんだっけとも思ったりしますね。

それでも経営統合を選択した理由

それでも、この経営統合が実現したの背景には、1つの大きな理由がありました。

それが、「スーパーアプリ」という存在です。

ぷくろー

「スーパーアプリ」という名のとおり、機能的にもビジネス戦略的にも「スーパー」なアプリなんだ!

「スーパーアプリ」を作りたいという思惑の一致

そもそも「スーパーアプリ」とは何でしょうか?

スーパーアプリは、簡単にいうと、「1つのアプリ内で全てが完結する統合的アプリ」です。

中国の二大テック企業であるアリババとテンセントが同グループのアプリ「Alipay(アリペイ)」と「WeChat(ウィーチャット)」がまさにそれにあたります。

スーパーアプリの1つであるアリババグループのアリペイアプリ
アリペイのアプリでは、このように1つのアプリの中に様々な機能が備わっています。
さらに、「ミニアプリ」という様々なアプリがアプリ内で公開されています。

「スーパーアプリ」は、インターネットサービスにおけるハブともいえるサービスであり、ここを抑えることは戦略上大きな意味を持ちます。

実際に、LINEは、「ミニアプリによるO2O戦略」をすでに発表していますし、金融領域においてはすでに「LINE証券」や「LINEほけん」など、様々な関連サービスに対してLINEという1つのアプリからアクセス可能となっています。

また、ヤフーについても、PayPayを軸に、「PayPay銀行」など各種金融サービスはすでに商標が登録されています。また、アリババとの深い関係性を考えると、「PayPayはスーパーアプリを見据えた上での布石」と考えても無理はないでしょう。

LINE のミニアプリ

LINEが2019年6月に発表した「LINE Mini app」はまさにスーパーアプリのこと

こうして総合的に考えると、両社が「スーパーアプリを作りたい」という思惑で一致したと考えることができるわけです。

メッセンジャーを持たないヤフー

では、1社で実現するのではなく、なぜ2社で実現しようとしたのでしょうか?

それぞれ苦手分野があったからです。

ヤフーは、メッセンジャーアプリを持たないため、ユーザーとの接点がどうしても希薄化してしまうという課題を持っていました。

ぷくろー

たしかに、LINEとヤフーでいうと、LINEの方が触れている時間は長いという人も多いんじゃないかな

もちろん、ヤフーニュース等の莫大なDAUを誇るアプリはあります。ただ、メッセージ機能は、企業と人を自然につなぐことを可能にしてくれ、これはスーパーアプリのにとって必要不可欠なものだったのです。

ヤフーがゼロからメッセージングアプリを作ってそれが普及するかとういうと、相当怪しいですよね。これが統合の理由になるわけです。

赤字経営が続くペイメントで苦戦するLINE

一方、LINEは、LINE Pay を中心とした「戦略事業」に多額の投資をしており、全体としても赤字経営状態です。

LINEの四半期純利益(利益率)
毎Q80億円〜180億円の損失が出ている状況。戦略事業の1つである「LINE Pay」がその大きな要因だと考えられている。

戦略的かつ計画的な赤字のため、それ自体悪いことではありませんが、どうも LINE Pay の利用も伸ばしきれておらず、業界第一の PayPay との差は開いています。

スマホQR決済の利用動向アンケート(by インフキュリオン・グループ)

スマホQR決済の利用動向アンケート(インフキュリオン・グループ 2019年11月7日実施 n=7,133)

このような状況の中、LINEとしても、PayPayという圧倒的なペイメントアプリの力を借りたかったわけですね。

国内競合となりうるのはどこか?

というわけで、ヤフーとLINEによる経営統合について、「スーパーアプリ」という切り口から、解説をしてきました。

このメガテック企業同士の経営統合に立ち向かうことのできるプレーヤーはいるのでしょうか?

金融領域は楽天が圧倒的

まず、名前があがるのが「楽天」ですね。

楽天は、楽天ペイ、楽天edy、楽天カードなどの決済領域、楽天銀行に楽天証券と金融領域においては圧倒的な力を誇っています。

ただ、ヤフーの課題と同様に、メッセージアプリを持っていないところが弱みですね。正確には、Viberという全世界でみるとLINEよりもユーザー数の多いアプリも持っているのですが、国内では全くといっていいほど聞かないですよね。

独立系の決済サービスでいうと、Origami

独立系の決済サービスでいうと、Origami

また、決済領域を切り出して考えるなら、独立系として「Origami」の存在は鍵となるかもしれません。

Origami一社では、資金力的にも会社サイズ的にも戦うことは難しそうですが、どこかが買収するというストーリーは考えられるでしょう。

あとは大手キャリアのKDDI・ドコモがどう絡むか

さいごに、KDDIとドコモの動向は気になりますね。

ヤフーとLINEの背後にはソフトバンクがいるわけで、結局は携帯キャリア同士の戦いとなる可能性もあります。

また、楽天とKDDIは2018年11月に業務提携を発表しています。この2社が結びつくと、ヤフーLINEへの対抗馬として最有力となるでしょう。

ぷくろー

楽天とKDDIは、経営統合でないにせよ、次の戦略について対話しているんじゃないかな。分からないけど。

まとめ

本記事では、ヤフーとLINEという二大テック企業の経営統合に関して、その背景にある「スーパーアプリ」という未来像について解説をしてきました。

もちろんこれは1つの解釈です。実際に、ヤフーの報道資料には、経営統合の理由として以下の4つのシナジーをあげています。

  1. マーケティング事業におけるシナジー
  2. 集客におけるシナジー
  3. Fintech 事業におけるシナジー
  4. 新規事業/システム開発におけるシナジー

わりと抽象的な内容ですよね。これを具体的に一言でいうと「スーパーアプリ」になるのではないかとも思えてきます。

真相は分かりませんが、インターネットサービスをゆるがす大ニュースについて、みなさんも是非考えてみてください。

また、この記事がそのきっかけになると嬉しいです。