ぷくろー
本記事では、オランダのチューリップ・バブル、イギリスの南海バブル、1929年ウォール街のバブル、1990年の日本バブル等、過去の代表的なバブルの事例を振りかえりバブル崩壊の予兆を分析していきます。
NYダウやS&P500などが高値を更新する中で、バブル崩壊に対して不安をお持ちの方も多いことでしょう。
また、新型コロナウイルスによる全面安を受けて「ついに大暴落がくるか」と懸念されている方もいらっしゃるでしょう。
そんな方はぜひ読み進めてみてください。
目次
歴史的バブルはなぜ起きたか?
まずは、代表的なバブルの事例として、以下の5つについて触れていきます。
- オランダのチューリップ・バブル
- イギリスの南海バブル
- 1920年代のウォール街バブル
- 1960〜1980年代の米国のバブル
- 日本の1990年のバブル
各バブルについての解説は、『ウォール街のランダム・ウォーカー』を参考にしています。
オランダのチューリップ・バブル
チューリップ・バブルは、17世紀初めにオランダで起きたチューリップの球根を巡る投機のことです。
人類史上初めの大規模なバブル劇といってもいいでしょう。
当時、チューリップの球根にそこまで価値がないことには、ほとんどみんなが気が付いていました。ただ、周りが上がると信じればさらに上がっていくというループに入り、球根の価格はどんどん上がっていきました。
1637年1月には、チューリップの球根が20倍に跳ね上がりましたが、逆に2月にはその反動で20倍以上の値下げ幅を見せ、売りに売りが重なりました。
ぷくろー
イギリスの南海バブル
南海バブルは、18世紀初頭のイギリスで起きた「南海会社」という国策会社を中心としたバブルです。
18世紀初頭、イギリスでは富裕化した市民向けの投資対象を作る必要性から、南海会社という国策会社が作られました。
南海会社は、アフリカの奴隷貿易に手を染め、経営は安定したものではありませんでしたが、ロンドンの本社ビルの体裁を整えるなど、国民への魅せ方が非常にうまかったと言われています。
また、資金を集めるために、「頭金10%で、次の払込は1年先でOK」など払込条件が非常にゆるかったことも、バブルを引き起こした1つの要因と指摘されています。
当時は、南海会社の他にも、中身のほとんどないような新規上場会社も登場しましたが、「第二、第三の南海会社」を求めて、買いが殺到しました。
最後には、南海会社の経営陣が、自社の株が実体を伴わない上がり方をしていることに不安を抱きはじめ保有株を手放したというニュースをきっかけに、株価は1/10ほどまで一気に暴落することになりました。
ぷくろー
1920年代のウォール街バブル
1928年〜1929年にかけて、米国では国をあげての株式投機ブームとなっていました。
1928年3月〜1929年9月初めまでの1年半の株価上昇率はそれまでの5年間に匹敵するほどの水準でした。
ただ、「実体経済は下降線をたどっている」ことから、ウェルズリーの賢人とも呼ばれる投資アドバイザーロジャー・バブソンは、暴落を予測。
ダウ・ジョーンズのニューステープにバブソンの言葉が流れると、市場は急変し一挙に当日中に6%近くの下落を記録しました。
その後、当時のハーバート・フーバー大統領は「わが国経済のファンダメンタルズは…健全で万事順調である」という発言を残しましたが、下落の勢いは止まりませんでした。
さらに、ファンダメンタル学派の守護神アービング・フィッシャー教授も「株価は今や”恒常的な高値圏”にある」や「信用取引で博打をしている、一部の頭のおかしい連中がはじき出されただけだ」といった声明を出しますが、その後3年間でほとんどの銘柄は95%ほどの下落幅を記録しました。
ぷくろー
1960〜1980年代の米国のバブル
1960〜1980年代の米国は、いくつものバブル崩壊劇がありました。
トロニクスブーム(1959-1962)では、エレクトロニクスをもじった社名の新規公開株が相次いで出現し、上場後株価は大きく上昇しましたが、その後そのほとんどが消えていきました。
コングロマリットブーム(1960年代半ば)では、コングロマリット化によりPERを上昇させる会計上のトリックにより株価は右肩上がりに上昇しましたが、その後収益がついてこなかったり、連邦取引委員会の調査が入ったりで、株価は軒並み下落していきました。
パフォーマンス投資ブーム(1960年代後半)では、短期に大幅に値上がりしそうな「コンセプト株」を組み込んだファンドも流行しました。砂上の楼閣を築きやすい銘柄を組み込むことで、短期ではS&P500を上回るパフォーマンスを発揮するものもありましたが、そう長くは続きませんでした。
70年代には、「健全な原則」への復帰が叫ばれ、IBMやマクドナルドなど、ブルーチップ銘柄(優良銘柄)への投資が主流になりました。しかし、その中でも、投機が始まり、PERは80前後まで上昇。1980年には、15程度まで下がることになりました。
80年代には、またもや新規上場ブームがやってまいりました。バイオテクノロジーやエレクトロニクスが今回のキーワード。ただ、「モハメッド・アリ・アーケーズ・インターナショナル」という会社に対して、モハメッド・アリ本人が投資を拒否したことをきっかけに新規上場株全般で暴落が見られました。
ぷくろー
日本の1990年のバブル
さいごに、記憶にある方もいるかもしれませんが、日本の1990年のバブルです。
僕自身は生まれたばかりだったので、まだ記憶がないのですが、親から当時の話を聞くことはありました。
1990年の日本は、世界的にみても以上なほどに地価・株価ともに上昇していました。
✅ 地価
・55年から約75倍上昇
・総額は世界の富の約20%に相当
・首都圏だけで米国全土を購入できる規模
✅ 株価
・55年から約100倍上昇
・時価総額は米国の1.5倍の規模
・平均PERは60倍
これらの数字をみるとよくわかりますね。
まさに泡のようにみるみるうちに大きくなった日本の地価や株価は、日銀が銀行の与信活動を制限し金利上昇を誘導したことをきっかけに、調整どころではなく暴落することになりました。
ぷくろー
過去のバブルから学ぶバブル崩壊の5つの予兆
では、これらの過去のバブルの歴史から、どのような教訓を得ることができるでしょうか?
上記の例を抽象化して、「学び」に落とし込んでいきましょう!
整理をしてみると、バブル崩壊の予兆として以下の5つが挙げられます。
- 周りの人が株の話ばかりをしている
- 実のない新規上場や合併が市場で評価されている
- 実体経済は下降線だが株価は伸び続けている
- HOTなワードを会社名や事業者名に
- PER等の指標の異常な上昇が正当化
以下では、それぞれの点について、解説をしていきます!
周りの人が株の話ばかりをしている
1つ目のバブル崩壊の予兆は、周りの人が株の話ばかりをしている状態です。
これは、オランダのチューリップ・バブル、米国の1920年代のバブルを中心に、多くのバブルにおいて共通していえることですね。
現状、日本ではまだまだ投資人口は少なく、周りの人がみんな株の話をしているということはないでしょう。むしろ、話ができる人が周りにいなくて困るという状態に近いのではないでしょうか。
ただ、日本人は「投資=ギャンブル=怖い」といった認識の人も多く、日本だけを見ていると判断を見誤るかもしれません。
世界の株式市場のシェア半数以上を占める米国においてどうなのかが目安になるでしょう。
ぷくろー
実のない新規上場や合併が市場で評価されている
2つ目のバブル崩壊の予兆は、実のない新規上場や合併が市場で評価されている状態です。
たとえば、イギリスの南海バブル時には「事業内容は分からないが莫大な収益は上がる」といった目論見書で新規上場ができて高値がついたり、米国の1960年代にはコングロマリット化により株価が上昇していたりしました。
コングロマリットといえば、日本では、ソフトバンクがコングロマリットのような状態になっていたり、ヤフーとLINEの合併において「シナジー」が強調されていたりします。
こういった一見良さそうなニュースも、一歩踏みとどまってきちんと考えてみるとよいかもしれません。
ぷくろー
実体経済は下降線だが株価は伸び続けている
3つ目のバブル崩壊の予兆は、実体経済は下降線だが株価は伸び続けている状態です。
1929年の米国はまさにこの状況でした。株価は上がり続けるものの、実体経済はすでに伸び悩み。
株価は、経済成長を正確に表すものではありませんが、経済成長が止まっているのに株価が膨らみ続けていたら、危険信号と考えるとよいかもしれません。
HOTなワードを会社名や事業者名に
4つ目のバブル崩壊の兆候は、HOTなワードを会社名や事業者名にあげている状態です。
これは、言うまでもないかもしれませんが、会社名や事業者名をトレンドワードにするのは、砂上の楼閣作りを狙っているわけです。
たとえば、1960年代の米国では、「エレクトロニクス」をもじった社名の会社の新規上場が相次ぎました。
また、数年前にも、「ブロックチェーン」を会社名に入れたところ株価が上昇したといった話もあり、今後も気をつけたいところですね。
ぷくろー
PER等の指標の異常な上昇が正当化
5つ目のバブル崩壊の予兆は、EPR等の指標の異常な上昇が正当化されている状態です。
たとえば、PERは15前後が一般的な値ですが、1970年代の米国では、ブルーチップ銘柄(優良銘柄)への投機が起き、PERは80前後まで上昇していきました。
結局、1980年には15前後まで落ち着くことになったように、指標の異常な上昇は、いずれ調整されていく可能性が高いです。
直近では、研究開発に資金をつぎ込んでいるアマゾンがPER100前後であったり、Adobeは50前後であったりと、テック系で若干高めの水準のところもありますね。
利益を出そうとすれば出せる体質なのであれば問題ありませんが、そうでなければちょっと疑ってみたほうがよいかもしれません。
ぷくろー
まとめ
本記事では、『ウォール街のランダム・ウォーカー』を参考に、過去のバブルの事例をご紹介した上で、バブル崩壊の予兆を5つの項目に整理して解説してきました。
こうして振り返ってみると、「そんなの当たり前じゃん」と思うかもしれませんが、「当たり前のことに気づけないのがバブル」なのかもしれません。
あるいは、バブルな状態は分かった上で、感情に負けてしまい「自分よりも後に買う人がいる」という考えの元、高値掴みしてしまうということなのかもしれないですね。
いずれにせよ、こういった過去のバブルを学んだ上で、冷静に向き合っていけるといいですね。本記事が、その一助になれば嬉しいです。
さらに詳しく知りたい方は、以下の書籍の第二章を読んでみてください!
ぷくろー